東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 数学対策(院試)
数学対策
情報理工学系研究科の数学は2時間半で線形代数,解析学,確率・統計の3分野が問われます.私のように,単位を取らせるだけのあっさりとした数学に慣れてきた人にとっては非常に難しいと思います.当たり前ですが,過去問には答えがついておらず数学が苦手な人にとっては地獄です.さらに過去問は不親切なことに過去5年分しか公開されていないので研究室訪問の際に積極的に院生に声をかけて過去問をもらいましょう.(2019年の春までは15年分程あったのですが消されてしまいました...)
私の取り組んだ過去問演習の方法はまずは2時間粘って考えてみてダメなら参考書やサイトや他人の答えからヒントを得て考えるのが一番だと思います.本番は意味わからんくらい難しい問題しか出ないので,自分で考える力を養うことが重要です.
目安の点数は大体6割くらいです.もちろん専門科目を9割程取れば数学3割でも受かりますが,専門事故ったとき用に6割取っておきましょう.因みに内部生は平気で満点取ってきます.頑張って戦いましょう.
線形代数
まずは線形代数から,線形代数は毎年固有値,対角化,たまにレイリー商やラグランジュの未定乗数法など比較的対策しやすい内容が出題されます.しかしイレギュラーもあり証明だらけの地雷年もあるので参考書はしっかり読み込んでおく必要があります.参考書はマセマ,大学院への数学を主に使用しました.
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線形代数入門も買いはしましたが,マセマに比べるととっつきにくく時間効率が悪いと判断したためやりませんでした.
固有値,固有ベクトル,正規化,対角化の流れさえつかんでおけば4,5年分は解けるようになるかと思います.それからカーネルやベクトルの性質等を詰めていけば十分かと.
また固有値計算やシュミットの直交化法において計算ミスすると悲惨な結果になるので正確な検算力やミスってる直感を鍛えておきましょう.
勉強法としてはマセマで基本的な公式と計算方法を学んだ後に大学院への数学を演習し,最終的に過去問演習をやりました.大学院への数学は幾何的なイメージを大事にする参考書なので線形代数をただの行列ではなく意味を理解しながら解けるのでお勧めです.ただ問題間違えや解答ミスが複数あるのでそこに気づけることが必要になります.
解析学
解析学は非常に範囲が広く何を対策したらいいかわからなくなりがちです.微積分学,常微分方程式などと書いておきながらフーリエ変換や複素積分,偏微分方程式がちょこちょこ出題されます.しかし,一番よく出るのは微積分学と常微分方程式なのでそれらをマセマで学習し基本公式を覚えた後にひたすら過去問演習,過去問に他の解析学分野が出てきたら参考書をパラ読みするくらいがちょうどいいと思います.(複素積分は知識として持っておいた方が実数の問題でも簡単になることがあるので覚えとくと便利です)
微積分学はマセマと大学院への数学,常微分方程式はマセマと黄色本をやりました.(が,常微分方程式で問われるのは一般解や特解を求めるような問題であり,黄色本は主に級数展開や収束性だったのであまり役に立たないかもしれません)
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黄色本は異常なほど難しいです.解答が発想の異常者なので,あんまり参考になりません.しかし,もとは大学院入試の詰め合わせ,持ち合わせの知識で解けるように作られているので問題集としては十分です.
また複素解析は以下の参考書で学びましたが,がっつりはやっていません.行き帰りの電車で読む感じでした.
偏微分方程式は授業で少し齧りましたが,齧ったっきり放置だったので未だに何も知りません.ベクトル解析は本を借りたものの読みませんでした.解析で点取りを頑張りたい方は,これら含めて学習しておいた方が安心だと思います.
解析学は与えられた式をこねくり回して証明したり,大学入試のような微積分の証明問題であったり,典型的な常微分方程式を解く問題が主です.そのため基礎的なことを押さえたならば,後は過去問演習に費やすのが吉です.過去問演習において,解答を思いつくまでひたすら悩んで解くことが大事です.そうして得た知識や解法を別の問題にも結構応用できるので公開されている分の数学の過去問は全部最後まで解き切りましょう.
確率・統計
確率・統計は東京大学の学部入試のような確率問題,または大学数学で学ぶ確率統計の中からモーメント母関数やガウス積分,正規分布あたりが出題されます.前者は大学入試の参考書を引っ張ってくるか,高校数学の美しい物語などで典型問題を復習するとよいと思います.後者はマセマで対策後に黄色本をやり過去問演習に取り組むとよいかと思います.ちなみにt検定や複雑な分布系は出題されず,分布系が出たとしてもちゃんと導出できる親切設計になってることが多いです.
ただルールが複雑な確率が問1で出題されると全く手が付けられなくなり涙を流すことになるので未知のルールから法則性を導けるような勉強をしておく必要があります.これは過去問や黄色本をじっくり解くことで養われます.この作業が一番きついです.
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※マセマの確率統計は名前が変わって統計学に統一されています.中身はさほど変わりません.
ある確率に対して,モーメント母関数から期待値,分散を求めそこから正規化した結果,期待値が0,分散が1となることを自分の手で求められるようにできるようになりましょう.どれができるようになるとほかの分布にも対応ができるようになります.また漸化式を復習しておきましょう.確率を漸化式で求めさせてそこから答えに帰着させるような問題が頻繁に出ます.(特殊ルールにおける確率問題に多い)無限和と漸化式の関係を使う問題に慣れておくことが重要です.
まとめ
数学は結構難しいので専門科目全振りで数学は諦める姿勢を外部生は取りがちですがそれはもったいないです.他専攻が英語:数学:専門科目=1:1:2で取るのに対しコンピュータ科学専攻は英語:数学:専門科目=1:2:2と満遍なく取るという噂もあるので数学もちゃんと対策しておくと本番救われます.専門と同じくらいの比率で勉強しておきましょう.